過日、
2017年8月24日(木)の早朝、
長い間の病との闘いを終えられ、天国へと旅立って逝かれました。
バリトン 太田直樹さん
ご家族の皆様、
いつも一緒に音楽をなさっていらしたご友人の皆様
松本市民オペラで共に頑張って来られた皆様
教え子の皆様
…
そのお悲しみはいかばかりかと存じます。
私にとっても、太田直樹さんはかけがえのない存在でした。
今は大きな柱を失ったかのような気持ちでいます。
これまでご一緒に音楽をさせて頂いたことに対する太田さんへの心からの感謝と、
ご冥福を心よりお祈りいたします。
思い起こせば、
2007年1月20日、<かぐわしき歌曲に宛てて>の第一回目の公演をいたしました。
それから、十年余り、初めてお会いしてからは十一年余り経っていますが、
ご一緒に音楽創りの旅をさせていただきました。
なんてありがたいことだったかと…改めて思います。
おかげさまで、この六月のデュオリサイタルを含め、
これまでに九回のドイツリートリサイタルをご一緒させていただきました。
一年から一年半の準備期間でいつも快く合わせをして下さり、
その、どの合わせも、幸せに満ちていました。
たとえ私がどんなに及んでいない時も、
またどんなに移動と荷物の重さで疲れきっている時も、
太田さんと合わせをした後は、
まるで、芳しいバラの花びらを上から振りかけられたかのような気持ちで、
いつも帰途についていました。
与えて下さる音楽の大きさ、
表現の広さも、深さも、美しさも、どれも一級品でした。
最近では、合わせの時に、
一瞬、何が起きたの…?と思うほど、
言いようのないほどの美しい響きで歌われることが何度もありました。
鳥肌がたつのを抑えることはできず、ピアノを弾いていたことがまるで昨日のようです。
そして、つい先頃の七月ニ十日、
ご自身の最も愛する音楽仲間であられた、お二人の素晴らしい音楽家と、
白寿ホールでフ―ゴ・ヴォルフのイタリア歌曲集を全曲歌われました。
その時の太田さんの歌声は、会場にいる全ての人々のこころを揺さぶるような、
気品と深い響きのある美しい、美しい歌声でした・・・・・
十年余りの間の太田さんとの音楽の旅、
言葉になんてすることのできない程の感謝と感動です。
太田さんの音楽を心の底から愛していました。
<かぐわしき歌曲に宛てて>は、
十回までをまずの目標にしていましたから、一歩手前で終わってしまうことになりました。
最後の一回は、いつか、私があちらにいったら、
即効お願いして一緒にすることにいたします
これまで<かぐわしき歌曲に宛てて>をお聴き下さった全ての方々に、
心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
六月のコンサートの翌日、愛らしい愛娘さんとご一緒に瀬戸大橋や倉敷を周り、案内させていただきました。
太田さんは、始終子供のように喜んでいらして、
備前焼を買い求められ、
美味しいお茶を求められ、
そしてその時の御礼を、それから後も何度も何度も私に言って下さいました。
さわやかな笑顔と心の優しさ・・・・・
コンサートは終わってしまいましたけれど、
かぐわしい一輪の花が私の心にのこりました。
たぶん一生咲き続けると思います
いつかまた逢えますね
感謝を込めて
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
小島裕子