”しなやかな演奏”のための考察

 

”心も身体もしなやかな演奏”

 

自由に、伸び伸びと、生き生きと、強く、たおやかに、・・・

実現したい演奏に対する想いは様々にあると思います。

 

私が、<音楽と身体>に関わる活動を通じて皆様にお伝えしていきたいこと、

それは、いくつかの段階に分けることができると思います。

 

1.気付くこと

2.身体について「知る」、「学ぶ」、「理解する」こと

3.演奏身体運動に繋げていくこと

4.音楽表現に結びつけて”音”として放たれること

 

大きくは、このような段階にまとめることが出来るのではないかと考えています。

それぞれについて少し詳しく述べますと

 

1.『気付くこと』とは・・・・

演奏を進歩させ、向上させたいと願っているのは音楽を続ける者ならば誰しもだけれど、

自分を修正することは、なかなか出来ないもの。

慣れ親しんだやり方を違う角度から再考察してみることは、

実はかなり難しい事なのかも知れないです。

 

しかし、ちょっと立ち止まって、

焦らず、また自分を過信せず、

そもそもの身体の元となるところから考えてみることが、

結局はトータルで自分自身を次の段階に進化させていく

期待と希望に繋がる「扉」になることが多いにあるということ。

 

これまで良いと思っていた姿勢は本当にそれで良いのか?

身体の一部だけを酷使して演奏していないか?

できないパッセージは本当に練習が不十分だからなのか?

・・・etc

 

例えば、

マスタークラスで、

立つことさえきちんと出来ていないのに、

「もっと自然に呼吸して!!!」とドイツの歌い手から指導を受ける声楽家。

 

「指の角度をこのように打鍵して!!そうすれば、その音色が出るはずだわ!」

と注意を受けるピアニストは、肩が上がったまま演奏をしているので

いくら先生のような角度で打鍵しようとしても身体的に無理が生じている。

 

これらのプロの演奏家は、一体どこで身体の使い方を改めて考え直し、

そこから進化をすることができるのでしょうか?

本来ならば出来るはずの奏法であり、本来ならば可能なはずの演奏かも知れません。

 

2.『身体について「知る」、「学ぶ」、「理解する」こと』

”私達声楽家は自分の楽器についての正しい知識を持ち、

清らかな心を大切にして芸術の理想に身を捧げるという義務を負っている。”

・・・・・リリー・レーマンはその著書で述べています。

 

解剖学を紐解き、身体のしくみを知り、

何気なく使っている自分の”からだ”について、学ぶことは、

命への感謝と人体に対する尊厳の気持ちが溢れてきます。

 

音楽家が演奏身体運動を行なうための基礎知識として

「演奏に関わる部分の解剖学について学ぶ」ことは、

その音楽人生のどこかの時点で適切なカリキュラムで成されることが

もっと習慣化されたらいいのにと思います。

どこかを故障して初めてドクターから説明されるのではなく・・・。

 

しかしながら、私達はそこで止まるべきではありません。

知識は何のためのものなのか?

それが次の段階です。

 

3.演奏身体運動に繋げていくこと

この”身体に関わる知識”を”演奏”に繋げていくためには、

知識として知るだけでは足りない。

身体のしくみを踏まえた上での、<からだの使い方>を身に付ける必要があります。

 

”仕組み”を意識すると、

むやみに身体を使って音を出すことが、いかに良くないことかが実感でき、

正しくあるいは、少しでも望ましい身体の使い方ができるように成りたいと思うようになります。

 

普通に思っていた姿勢は、実は前のめりだったり、

下半身が使えていない立ち方だったり、

良いと思っていた姿勢は、胸が張り過ぎて背中や肩・首に負担が掛かっていたり、

・・・etc

それらを改善していくためには、より具体的な取り組みが成されることが望ましいですし、

そうすることによって、確実に結果が伴ってきます。

 

私はここに、ピラティスをその最適なアプローチの一つとして、

≪ピラティスをベースにしたボディコンディショニング≫をお勧めしています。

 

私の経験から、あるいは実際にこれまでレッスンを受けてきた方に表れた変化は、

・自分の身体の軸の意識を付けることが出来る。

・軸、すなわち身体の要となる意識を保ちながら演奏運動ができるようになる。

・音色に応じて、保つところ、緩めるところ、使い過ぎないべきところ、強力に使うところ・・・

に対して敏感になる。

・・・などなど多くの良い効果が導き出されてきます。

 

身体の軸は心の軸となります。

 

4.音楽表現に結びつけて”音”として放たれること

さらに、身体というのは、

どこから使うのか?

・・・身体の深いところからの動きが美しく理にかなったものだと感じています。

 

どこを思って使うのか?

・・・思うことによって逆に力が入り過ぎていることもあります。

 

自分の良いと思っている感覚は果たして正しい身体の使い方なのかどうか?

・・・左右のバランス。

呼吸を表す様々な言葉から喚起される実際は果たして望ましいのか・・など。

 

これらのことが非常に重要なポイントだと考えています。

 

そして、いよいよ最終段階の

”目指したい音、表現したい音楽” と ”身体の使い方” の≪フィードバック≫

が、重要なものとなってきます。

これが理想的な演奏練習なのかも知れません。

 

身体と心のバランスは、個人個人によって様々であり、

また私達に解明できない身体の不思議は永遠にあるものだと感じています。

 

長くなりましたが、

これらの考えに基づいて、

セミナーや講座を開いたり、パーソナルレッスンを通じて活動を行なっています。

もう5年くらいになるでしょうか。

 

特に一人一人と向き合うことを大切に活動しています。

お陰さまで、各地から、また様々な専門の音楽家からも興味を示していただき、

少しずつではありますが、拡がって来ています。

 

ご興味のある方がありましたら、御遠慮なくお問い合わせ下さいませ。

 

さて、この春から「若いピアニストのためのマスター講座」を新しく予定しております。

一つ前のBlogに詳しく載せていますので宜しければご覧下さい。

 

ご希望があれば、他の土地での開催も実施したいと考えています。

 

今後ともよろしくお願い致します。

 

Y.K. MUSIC AND BODY METHOD代表

小島裕子