「時間をかけて向き合っていくと必ず可能性が開ける。」
このことをお伝えすることは、一体何てむずかしいのだろうと思います。
特効薬なんてないです。
大切なことに”本心”で気付くこと、気付いたらこれまで当たり前に思っていたことを感謝に変えて、
新しい視点を取り入れて考え直す勇気をもつことだと思います。
たとえば、
マスターコースで遭遇する『教える側も、教えられる側もそのことに気が付いていない状況』
「なぜこんな音がでないの?」「どうしてもできません…」
受講ピアニストの肩がどうしても少し上がってしまうために、求めたい音が出ません。
指先の扱いだけでは解決できず、先生はあきらめてしまいました。
肩が上がるにも理由があるのですが、そこの指摘があるだけでも、
このレッスン、まず半分は解決していたと思います。
身体が上手く使いこなせている先生と、上手く使いこなせないことが理由で音色が創りにくい受講ピアニスト…
股関節が上手く使えなくて、立っているだけでも身体が前かがみになっている歌い手に、
「もっと背中をリラックスして!呼吸は楽にするものです!」といくら言っても、
それは無理なことだと思います。
この場合、上手く立てる身体をつくることは回り道でもなんでもなく、
まず一番まず一番大切なこととして取り組むべきことだと思います。
また「腹式で歌う」という表現はよく使われますが、
その言葉だけで全ての皆様に正しく理解されているでしょうか?
人によって身体の意識は様々、同じ言葉でも身体や神経の反応は異なるので、
その反応が優れた先生と、身体の意識が育っていない受講生では、大きく器が異なります。
せっかく素晴らしいレッスンを受けても自分のものにしていけるかどうかはこの部分にも理由があります。
身体を整えていくことはそのためにも有効です。
先日、グル―プレッスンで見させていただいていたあるピアニストが、
慌てて連絡をして来られました。頸椎のヘルニアと診断されたことを報告されました。
すぐに、円背の状況と上手く付き合いながら演奏を続けていくための方針を立てて
、必ずお役に立てることをお伝えしました。
根本的な姿勢を年単位の時間をかけて改善する方向性と、負担がかかっていた首周りの筋肉をほぐし、
体幹を意識できるようにしながら
首に過度な負担をかけない自分なりの身体の使い方をみつけていくこと、です。
これまで肩や首に大きな負担がかかっている姿勢で、
音色やテクニックと熱心に向き合っていらっしゃいましたが、
これからは一つも二つも深いところから自分と向き合うことになります。
けれどそれは長い目でみれば、必ず良い未来に繋がる道筋であると思うのです。
道なき道をつくるためには、
時間と信念をもった行動をあきらめずおこなっていくこと。
音楽家が身体を整えることをその大切な要素として考えるようになるためには、
長い時間が必要かもしれませんが、その一助となれるように、
自分にできることを行なっていけたらと思います。
Salon.K
小島裕子